隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 コーヒーのスイッチを入れた後、キッチンの床に座り込んだ私を見て、魔獣にでもあったかのような恐々とした表情をしている。

「お、脅かさないでください。昨日のゲームの反省でもしてるんですか?」

「君のせいだからね」

「どういうことです?」

 五百城は呑気な様子で首を傾げる。「昨日さ、」と言いかけて、慌てて口をつぐんだ。いけない、いけない。勝手に人のスマホを見たなんていくらなんでも、マナー違反すぎる。

「な、なんでもない」

 何も無かったことにして立ちあがろうとすると、私と視線の高さを合わせるように五百城がすっとしゃがんだ。
 歯ブラシを口のなかに入れたまま、エクボを作って、にっと楽しげに彼は笑う。

「まさか隣で僕が寝てて意識しちゃって寝れなかったとか?」

 などと、あらぬ方向へと話題がシフトした。
 そんな勘違いに、目を細める。

「んなわけないでしょ」

 否定をするものの五百城はなんだか楽しげに顔をにやつかせている。
 そんな五百城に断固として違うと宣言したいものの、あまりこの話題を追うのも逆にツンデレだとか思われそうで嫌だ。
 ここは違う話題に変えて終わらせるのがいいだろう。

「ど、退いてくれる?」と睨むと、「はいはい」と、彼は立ち上がると私のためにスペースを作った。