隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 「うわー! むかつく! なんで狙撃で狙うんかなー?」

 「ぼーっと立ってたら、的にしてくださいって言ってるようなもんですからね。常に動いててください」

 「えー。そんなん無理! 逆に近場のプレイヤーにキルされるよ!」 

 動いていれば、今度は近距離に潜むプレイヤーに狙われる。
 気づかれたらロックオンされて、地の果てまで追ってくるプレイヤーもいるのが、このエリアだ。
 プレイヤーのレベル補正がされていたとしても、格上のレベルのプレイヤーに見つかれば、ワンパンチでキルされる。

 「ですね。じゃ、動いたり止まったりを繰り返せばいいんじゃないんですか?」

 「そんな適当すぎ! ちゃんと教えなさいよ!」

 「嫌なら帰ってもいいんですけど?」

 生意気なことを五百城が言う。

 「な、なんんん」

 たかが一度私よりランキングが高くなったからって。
 私よりエイム力があるからなんて。
 ほぼ無課金だからって、年下のくせに生意気だ。
 
 ……と、言ってやりたいが、ここはグッと抑える。大人なので。

 とにかく、このままムギちゃんと差ができて、さらにはゲーム下手くそ認定されたら、終わりだ。
 
 「同居解消しましょうか?」

 なんて捨てられるのだけは嫌だ。

 「今日はこの辺にしときますかね」

 五百城が大きく伸びをする。

 「ええ??? もう?」

 と言ったものの、時計を見るとすでに深夜1時を回っている。

 「明日、1コマ目からあるし、そろそろ寝ないとやばいんで」

 まだまだゲームしたかったが、そういうわけにもいかない。リアル大事。課金源を失うわけにはいかない。

 「そっか……。しょうがないよね。じゃあ、ハグしておかないと」

 エリアから出て、自宅へと戻ろうとアバターを移動させる。すると背後からふわっと何かに包まれた。
 振り返ると、そこにいるのは五百城だった。