隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました




 そしてゲームのイベント時間に合わせて五百城がうちにやってきて、課金アイスを食べつつイベントに参加している。

「ほら、烈火さん急いで!」

 五百城に言われ、そういえば今敵陣の真っ只中だったことを思い出す。棒立ちしていたアバターを家の中に入れた途端、画面が真っ白になった。

「な? なに?」

 何があったのかわからなかったので、五百城の画面を見る。するとムギちゃんは、コックピッドのような場所にいる。

 そして、照射機モニターの画面には私のアバターがいる廃墟の建物が映っていた。可愛い猫耳娘は、逃げ惑う敵たち目掛けて容赦無く砲弾を放っていく。

「戦車!! どこからゲットしたの! そんなの!!」

「敵サイドから拝借しました」

「いつの間に?」

 当然のように敵陣から奪ったと言ってのける五百城に若干引いてしまう。
 敵陣に単独(ソロ)で攻め入るなんて、凄いを通り越して、恐ろしすぎなんですけど。

「僕らのCエリアが占拠されている間は、敵はエリアから動けないので、その隙に敵陣地に侵入して盗んできました」

 戦車は課金の中でもジェット機につぐ高級アイテムで、リアル換算で何百万単位で取引されている。しかもガチャでしか手に入らない代物だ。オープンチャットでボイチャをつけている敵陣の罵声が耳に入った。フランス語らしい言語を話しているので、フランス人なのだろうか、すごい剣幕である。

「盗られたことに気付いたみたいですね」
 
「ムギくん。フランス語、わかるの?」

と尋ねた私に応えるかのように五百城はオープンチャットにフランス語を澱み無く入力する。

すると、敵陣の罵声がさらに強まった。

「煽ったら、こっちに向かって来るみたいです。僕がタゲ取るんで烈火さんエリアから離れてください」

と言われて、移動を始める。さらに五百城が敵とチャットでバトりつつ、敵を誘導するように砲弾を撃ち続ける。

 五百城のポテンシャルに驚きながらも、これは形勢逆転できるかも? なんて期待を抱く。