隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 
「ここです! マジすごかったです!」

 もうこのエリアのボスの攻略法知ってるんだったら、教えてくださいよ。こんなに簡単に倒せる方法があるって知ってたら、烈火さんのキャリーなしでもクリアできたのに」

 五百城は怒ったように頬を膨らませながら、コントローラーを叩いている。朝っぱらからゲームとは、さすが学生。元気が有り余ってる。昨夜、私はゲームの中で見事なダンジョン攻略方法を披露したようだ。それなのに、私ったら、エッチな何かだと勘違いするなんて

「穴があったら埋まりたい……」

 トースターで温めた食パンの隣にハムエッグとサラダを盛り付けたものを、ゲームに夢中な五百城のすぐそばにあるテーブルに置く。五百城はちらっと朝食のプレートへと視線を走らせる。

「朝食までいただいちゃっていいんですか。
 うわ! めちゃめちゃうまそう!」

 もはや出会った時の借りて来た猫みたいな彼は、どこへいった。だいぶラフになった喋りに、彼との距離が縮んだのを感じる。そもそも学生と社会人。しかも年下とか障害大きすぎだし、五百城と恋愛なんて、ありえない。
 彼との関係はゲームのプレイヤー同士ぐらいがちょうどいいというもの。

「まあ、ゲームの中のムギちゃんとは、毎日ハグする仲だったわけだけど」

 なんて独り言をごちりながら、トーストをちぎり、小さなガラスカップに入れたハチミツをつけて口の中に放り込んだ。ネットリした甘さのハチミツと塩気のある香ばしいトーストはやはり合う。パンの耳のカリカリ具合を堪能しながら、淹れたてのコーヒーをマグカップへと。コーヒーの芳しい湯気がたちのぼる。