隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました


 「それなのに、私と同じでリアルより、ゲームが優先なんて、もったいない」

 五百城との共通点のせいか、どこか警戒心が薄れている気がする。ゲームの中ではずっと一緒にいたけれど、リアルで出会ってからの時間は恐ろしいほどに短いのに。

 「ムギちゃんの中の人だから……安心できる……のかな」

 このまま綺麗な寝顔を眺めていたかったが、今日は平日、課金民としては稼がなくてはならない。べッドから降りようと、そうっと身体を回転させた。上体を起こそうと、枕から頭を持ち上げた途端、にゅっと五百城の腕が伸びてきた。力強い力で身を引っ張られ、再びベッドに戻される。

 「ちょ、五百城……くん?」

 私を背後から抱きしめる腕の力が強くて、逃れられずにジタバタと両手をさせる。

 「ねえ、起きたの?」

 そう尋ねても、背後から聞こえるのは、静かな寝息だけだ。

 「だめ、寒い……」

 五百城が溢した吐息が耳元に吹きかかる。

 「ひゃんっ!」

 その熱のくすぐったさに思わず声を出してしまったが、それでも五百城は起きる様子がない。さらにきつく抱きすくめられてしまい身動きが取れなくなっている。

 「さ、寒いとかじゃなくて、その……」

 続きを言おうとした途端、スマホのアラームが鳴り出した。瞬間、緩んだ腕の隙間から抜け出す。ベッドから無事抜け出すと、

 「あ、おはようございます。烈火さん」

 背後から眠たげな様子の五百城の声がかかった。