隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました


 「よかった」

 私の言葉に、五百城は目を細めて笑った。
 笑ったその顔は、まだあどけなさが残る10代といった様子で、学生時代に家庭教師をしていた高校生の男の子を思い起こさせる。
 こんなにも未成熟な少年に、一体どうして恋愛感情など抱くというのだろうか。
 五百城と恋愛なんてありえない。
 彼はゲームの同居人でムギちゃんという可愛い女の子のアバターを使っている男の子なのだ。

 「……私、ムギちゃんと一緒にゲームしたい」

 ようやく心の靄が晴れた気がした。

 「早速ですが、24時までしか出ないアイテムがあって。 
 それ取りに行きたいんですけど、烈火さんがいたら、秒で終わるんで」
「キャリー目的ってことね」
「あ、バレました?」

 五百城は悪びれる様子もなく笑う。そう、ゲームの同居人が男だろうと、女だろうと関係ない。
 ムギちゃんはムギちゃんだ。

「仕方ないなあ。可愛い同居人のために働いてやりますか」


***


目が覚めると、手の中にあったはずのゲームコントローラーが消えていた。? 代わりに指先が触れているのは。ドクンドクンと鳴る心臓の音。え、……心臓の音?
 パッと顔を持ち上げると、五百城がすぐ隣で眠っていた。すやすやと幸せそうな寝息を立てている彼は、一応Tシャツを着ている。そして私も昨夜と同じパジャマ姿のままだ。

「これはどういう状況?」と、昨夜を振り返ってみる。昨夜、あの後五百城と2人で五百城が欲しがっているアイテムを手に入れるためにダンジョンに潜った。ボスを倒したのちに同居人クエストをこなして遊んで……と、2人で夜通しゲームしていたはず。
 それなのになんで五百城が私のベッドの中にいるのだ。
 ずりっと頭を枕元へと引き上げる。
 目の前には、同じ枕をシェアする五百城の透き通る程に綺麗な顔があった。

「本当にこの子、綺麗な顔してる」

 朝の気配の中で眺める五百城は朝の光を浴びて眩いばかりに神々しい。惚れ惚れするほどの顔を持っている彼は、きっとキラキラした人生を送っていることだろう。