一瞬のうちに扉が放たれてしまい、マンションの共有廊下に立つ五百城と向き合うこととなった。
 鋭い眼光の形相を見る限り、怒って……る……?

「い、い、五百城……くん? こんな夜中になんの用かな?」

 冷静を装いつつも、五百城の表情にビビり気味である。

「しましたよね。ログアウト」

 五百城の声は、まるで地獄の底から吹き出した炎火のように静かで恐ろしいものだった。

「な、なんのことだろう?」

「とぼけないでください。
 僕がログインしたタイミングで、ログアウトしましたよね。
 バレてないとでも思ってんですか?」

 さすがは同居システム。同居人の行動は全て相手に伝わってしまう。
 ログインもログアウトした時間も秒単位で見えちゃうのだから、嘘は通用しない。
 システム制作者よ。とんでもないもの実装してくれちゃったよ……。


「あのぉ。悪気はなかったんだけど。
 今までムギちゃんは女の子だと思って接してて……。
 そしたら突然リアル降臨して、男子だったーってなって。
 びっくりしたっていうか、心の整理がつくまでの時間が欲しいっていうか」

 ここは正直な気持ちを伝えて、理解していただくほかない。
 これで同居解消になったとしても、それはそれで仕方がないことなのだ。

 かなり勿体無いけど、それしかない。
 私の言葉に五百城はわざとらしいほどの大きなため息を吐いた。