「でもでもムギちゃんが男子とか! 
 心の整理が追いつかないし!
 でも、ボッチも嫌だし。もういっそのこと、ゲーム自体を辞めるしか?
 いやいや、それは……今まで、いくら課金したと!」


 頭を抱えて身悶えていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。


「こんな時間に配達?」

 そんなはずがない、時計を見ると23時を過ぎている。
 一体この夜更けの時間に訪ねてくる人なんて誰だろう。
 ピンポンと再度鳴った。
 玄関モニターを確認すると、液晶画面に映っているのは黒マスクをつけた五百城だった。

「ひい!」

 思わず悲鳴を上げてしまい口元を慌てて押さえ込んだ。

 “一体どうして五百城が家に来るの?”
 “まさか……、ログアウトしたから追いかけてきたってこと?”
 
 脳裏をよぎった妄想の中での五百城は、ちょっとヤバイ奴認定だ。
 ゲームでログアウトしたからってリア凸するとか、怖すぎなんですが。

「あのタイミングでログアウトしても、避けられてるとは思わないはず」

 自分の行動に言い聞かせるように呟いてみる。
 そしてまたチャイムが鳴る。
 深夜にチャイムが鳴り続けるのは、近所迷惑だし、別の要件かもだし。
 自分を納得させながら廊下を進む。

 玄関を開けた途端、ガッと扉の隙間から五百城の手が伸びてきた。