キングがメンバーへと労わりのセリフを告げる。だが、リアル優先と言いつつ、本当にリアルを優先させている人間がペテルギウスに何人いるのだろうか。

 皆、このゲームにとんでもない時間と課金をしている人たちばかりだ。
 クエストがリセットされる2時にゲームにログインして、日程クエストをこなし、深夜のうちに交易で物の販売の準備をはじめ、日中はレベル上げのためにモンスター狩り。
 そして夜は星ごとの討伐イベントに参加。

 おそらく、このゲームのトップランカーたちには、私なんかでは一生かかっても辿りつかない。それでもレベルだけは保とうと、日々発生する最低限のクエストだけは終わらせるようにしている。そうしなければ、いつか同居人のムギちゃんにレベルを追い越されてしまい、レベル差が出来すぎて、同居解消になる可能性もある。

「同居解消。それはイヤ。ぼっちやだ。野良は、イヤ」

 みんなが仲良しパーティーで戦う中、日々、孤高の戦士のごとくクエストをこなす姿を想像して首を振る。

「1人が好き。なんて強がり言いたくない」 

 妄想だけで涙が溢れかけているところに、ピコンとメッセージのポップアップが上がった。

【同居人のムギがログインしました】の、表示を見るなり、ログアウトボタンを押した。

「ふう。焦ったぁー」とゲームのオープニング画面に向かい、安堵の吐息を吐きだした。