などと冷静に遥が菜摘の百合説を否定する。

「親友どころか、友達辞める案件じゃないかな?」

 ついぼそっとこぼした。
 すると、話題に盛り上がっていた2人がこちらへと一斉に視線を向ける。

「わあ! 燕が意見した! めずらし」

 遥がわざとらしく驚いたような声をあげる。


 鶏肉のつくねのハンバーグに手をつけようとしていた箸を止めて、尋ねた。すると、菜摘が肩で切り揃えられた髪を揺らして首を振る。

「そもそも燕って、ドラマとか見ないタイプだよね。真面目だし、将来のためにって、家で料理の勉強とかしてそうだし」

と、お弁当箱の中にあるかぼちゃの煮付けを菜摘がフォークで突き刺して食べる。

「なにこれ、うまー! てかさ、毎日お弁当持ってくるとかなかなかできないよ。
 いい奥さんになる努力してるよね」

と、菜摘がもう一つと、今度はつくねのハンバーグを口の中へと放り込んだ。

菜摘の言葉に「そんなことないよ」と濁す。本当はゲームに課金するために節約弁当を心がけているだけで、家でゲームをしたいから外食せずに、自炊しているだけだ。ゲーム中心の生活をしているだけなのに、なぜか家庭的なイメージが持たれている。

「実は燕って、女友達が……、って。経験あったりする?」と興味深々な様子で尋ねられた。

 ――言えない。
ゲームのアバターが女子だったから、てっきり中の人も女子だと思ってたら、男だったなんて。
 そもそも、彼女たちには職場の友人である。彼女たちとはゲームの話など今までしたことがない。
 これを機会に、カミングアウト……というのもハードルがある。
 
 それに、彼女たちが言っているのは、女友達の精神が男性だったというやつで、見た目が女性で、心の中身は男性という主人公の女ともだち。アバターが女性で、中の人が男性。

「……ん? あれ? 一緒?」

 一周してみたらゲームもドラマの話も同じになってしまった。

「でもさ、仲良かった子に実は恋愛対象としてずっとみられてたっていうのは、抵抗あるかなぁ」