こういう時の父は無双しているので、誰も倒せない。
峯岸は身長も高いし、顔もそこそこいいので女性行員が放っておかないはず。きっと昇進をちらつかされたのか、何か弱みでも握られたのか知らないが、父に押し切られる形で、お見合いの席に座らされたのだと察する。
なんて可哀想な勇者。同情します。
峯岸はホットコーヒーを啜りつつも、どこかそわそわしている様子だ。
きっと、早く帰りたいはず。
お互いに笑顔も強張りかけたところで、
「あら、お二人なんだかお似合いみたいね」
と、仲人役の東都山銀行・東区本部長の堤氏の奥様が、無難なひと言を付け加えた。確かに、私も彼と等しく早く帰りたい。であるから、ある意味お互いの心理状態のマッチングはできている。
「ではあとはお若いお二人で」
ようやく露天商――いえ、仲人役の堤夫婦が席を立ち、スライムと勇者だけが、ソファー席に残った。
「あー。紅茶……おかわりとかします?」
勇者は気を使う様子で、おずおずと尋ねた。
「いえ、この後、予定が……」
と、手をひらひらと振る。スライムは、この先も誰も買いにこないことをわかっていつつも窓の外へと視線を向けた。庭園に差し込む日差しは、もう夜の帷を下ろしている。
仲人の都合で夕方からのお見合いになってしまったのだが、この時間であれば長居をするのは避けるだろうから、むしろ都合がいい。
「あっ。ですよね。時間も時間ですし、ここいらで解散しましょうか」
峯岸は身長も高いし、顔もそこそこいいので女性行員が放っておかないはず。きっと昇進をちらつかされたのか、何か弱みでも握られたのか知らないが、父に押し切られる形で、お見合いの席に座らされたのだと察する。
なんて可哀想な勇者。同情します。
峯岸はホットコーヒーを啜りつつも、どこかそわそわしている様子だ。
きっと、早く帰りたいはず。
お互いに笑顔も強張りかけたところで、
「あら、お二人なんだかお似合いみたいね」
と、仲人役の東都山銀行・東区本部長の堤氏の奥様が、無難なひと言を付け加えた。確かに、私も彼と等しく早く帰りたい。であるから、ある意味お互いの心理状態のマッチングはできている。
「ではあとはお若いお二人で」
ようやく露天商――いえ、仲人役の堤夫婦が席を立ち、スライムと勇者だけが、ソファー席に残った。
「あー。紅茶……おかわりとかします?」
勇者は気を使う様子で、おずおずと尋ねた。
「いえ、この後、予定が……」
と、手をひらひらと振る。スライムは、この先も誰も買いにこないことをわかっていつつも窓の外へと視線を向けた。庭園に差し込む日差しは、もう夜の帷を下ろしている。
仲人の都合で夕方からのお見合いになってしまったのだが、この時間であれば長居をするのは避けるだろうから、むしろ都合がいい。
「あっ。ですよね。時間も時間ですし、ここいらで解散しましょうか」
