隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 サラサラの黒髪に、形のいいおでこと、スッと綺麗に引かれた二重に、大きな黒目がちの瞳。肌はきめ細かく、マスクで隠れてはいるが、顎先も細い。この容姿なら、背後についてくる女性を痴女だと警戒するのも無理はないのだろう。

 ”なんだか悪いことしちゃったな”
 
 もっと早く話しかけていれば、印象はまだいいものだったはず。
 散々電車の中で、アピールしていたのに、彼は全く気づかなかったという。
 そのフレームのでかい黒縁眼鏡は一体なんのためにかけているのだ。
 
 もしや何かのアニメのキャラに扮してる。
 五百城の服を様々な角度から眺めたが、キャラが見当つかない。
 下手に尋ねるのもあれなので質問するのは諦めた。 

「……うちと間取り一緒ですね」と、ポツリ。

「あ、そうなんだー。ワンルームだけど、割と広めだよね」と返事すると、

「はい」と、水面に水を垂らしたようにまたポツリ。

「あ、チュンカもらうの忘れた。五百城さんはもらいました?」

 キングがコスをしてきたメンバーには配ると言っていた。
 五百城は首を振る。

「コスして行かなかったんで」

 口の中に飴玉でも入っているかのようにモゴモゴと言う。そうか。じゃあ、そのスタイルは彼のデフォルトか。

 ――と、いうより。
 先ほどまでの痴女に対する威勢の良さは、一体、どこへ消えたのだろうか。
 部屋に上がるなり、まるで借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。