隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました


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「改めまして、ペテルギウスの烈火です」

 木製のローテーブルを挟んで、青年に向かいぎこちない自己紹介をする。

「……五百城(いおき)です」

 ボソッと青年が挨拶をした。
 うん。知らないプレイヤー名だ。だからといって、もういいですと、部屋から追い出すのはできない。 

 五百城を納得させるまで、かなりの時間と労力がかかったのだ。せっかくなので、ココアを一杯分飲み終えるまではゲームについて語る相手になってくれなくちゃ、割に合わない。

 温かいココアのマグカップを五百城の前に置いた。
 五百城はというと、毒が入っているのを確認するように、ココアの水面を覗き込んでいる。
 
「ただのココアですよ。甘いの苦手だったら、コーヒー淹れますか?」

 そんな私の言葉に五百城は口をつぐむ。
 自分用の大きめなマグカップを掴み、こくりと一口飲んだ。
 
 熱いココアが冷え切った体の中を通っていくのがわかる。腹の底が温かくなる。部屋の中も冷蔵庫の中みたいにだいぶ冷えている。

 暖房を強めて、心の中もほぐれさせる。
 まだ外の空気と同じぐらいに冷たい風が、エアコンから噴き出していた。その風はすぐ近くに立っていた青年の後ろ髪を揺らしている。