ブースの外にいる人の動きへと視線を動かした。今もムギちゃんからの返信はない。
 意を決して、同年代らしき男性たちのブースに声をかけた。
 私の声に振り返った彼らの表情が硬い。

「あ、あの……ムギってプレイヤーの子を探してるんですけど、見かけませんでした?」

 勇気を出してみたものの、彼らは顔を隠すように口を閉ざした。固く金属のゲートが閉ざされる音を感じる。 
 ああ、ここがダンジョンだったら、全員からキルされるやつだ。

 リアルでのコミュニケーションの取り方って、難しい……。

 店の中を一周したあと、カウンターで飲み物を注文する。ロングアイスティーを手にして、D Jがかけるゲーム音楽のリミックスに身体を揺らしてみる。よく聴くとゲームでモンスターが湧くときに流れるサウンドが挟み込まれている。

「すごいよねえ。D J imari てさ、めっちゃT V出まくってるD Jでしょ。
 キングがオフ会の為に呼んだらしいよ。で、このクラブの貸切、とかさっすが、社長さんだよね」

 隣のスツールに黒いスパイダーマンのスキンを着た男が腰掛けた。逆三角形型の筋肉質な体つきのせいか、ピタリと身体に沿った衣装は、似合っている。

「キングって社長さんなんですか?」

「そう。キャバとかホストとか経営している社長で、クイーンは医者の嫁。
 お山の野ザルさんはホスト。
 まりっぺとみちょは新宿のキャバ嬢。あ、池袋、だったかな。
 水商売率高いね。やっぱMPDOって、廃課金ゲームだからねえ。時間とお金をかけたものがゲームを制するもんね」

「そうなんですねえ」と、相槌を打ちつつスパイダーマンのマスクをした男の隣で、グラスを傾けた。