「せっかくなので、ゲームやってみます?」
峯岸はブースの案内人に掴まったらしくゲームのリモコンスティックを手に持っていた。
峯岸が立ち寄ったブースは、ゾンビをひたすら倒していくシューティングゲームのブースだった。プレイヤーがつけるヘッドセットの画面がVR仕様になっているため、より世界への没入感が高いものだ。プレイ画面は目の前の大画面モニターに映しだされておりゲームを体験している人のみている世界を他者も共有できるようになっている。これなら、VR特有のソロで楽しむだけではなく、多くの人とゲームの世界を共有できる。
「あ、でもこういう物騒なのは、燕さんはお好きじゃないですよね」とスティックを引っ込めようとした。
いやむしろ、大好物である。
とはいえここはおとなしめで行こう。遠慮がちにスティックを受け取り、ヘッドセットをつけた。
峯岸は、ペアでゲームに参加できるダブルプレイモードを選択した。そして、ゾンビのいるエリアに放出される。
「play start!」というデジタルなボイスが流れると、早速、ゾンビが登場する。徐々にゾンビの数が増えていき、ゲームの難易度が上がってゆく。何度か峯岸がゾンビに囲まれる場面に陥ったが、そこは戦闘兵士烈火の腕の見せ所である。確実なヘッドショットをお見舞いして、ゾンビの大群を一掃する。
最後のウェーブを終えると画面が切り替わり、「congratulations!」とゲームエンドのクレジットが流れた。
試作画面の最後までたどり着いたらしく、拍手が沸いた。
ヘッドセットを外すと、気づいたら、ゲームブースに人だかりができている。
集中しすぎて気づかなかったが、ブースに足を止めた人が集まっていたようだ。
拍手喝采の渦の中で驚いているのは私だけではなかった。
峯岸が、私を見つめたまま、魂を抜かれたかのように、動かずにいる。
——やってしまった。峯岸に見せてはいけない一面を見せてしまった。
