隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

「全くこれはどうしたものか」と橋本会長が、ジャケットのシミをナプキンで拭っている。
「クリーニング代を」と源さんが財布をジャケットの中から取り出したが、橋本会長は「いや結構」と冷たく言い放つ。

先程まで朗らかな笑みに覆われた表情がこわばっていることに気づいて、流石にやりすぎた気がしてきた。

あとは峯岸が、こちらのシャツをお使いください。と紙袋を差し出すだけでいい。
峯岸との体格が似ているから、おそらく受け取るはずだ。
受け取らずとも峯岸の誠意は会長に伝わる。
だが峯岸が声をかける前に秘書が進み出た。
「会長、個室をお貸しいただけるそうですので、そちらでお待ちください。
代えのお召し物を車から持って参ります」と耳打ちをした。

——できる秘書である。

「少しばかり席を外させてもらうよ」と会長は席を立つ。

 峯岸が声をかけることなく、ミッションは失敗に終わった。だが、これで終わりではない。

 次こそはと次のミッションの準備に取り掛かった源さんたちとアイコンタクトをする。
 しかし、橋本会長は戻るなり、今日の食事会だが、急用が入ってしまったため、退席させてもらうよ。あとはお二人で楽しみたまえ。と言って店を出て行った。

 峯岸が橋本会長を追いかける。「あの、これを会長にお渡しいただけますか」とウイスキーの入った紙袋を秘書へと差し出した。

 すると「ありがとうございます。ですが、会長はウイスキーは嗜まないので、お心遣いだけで充分です」と、丁寧に頭を下げた。