「てか烈火ちゃんいつもよりおとなし? いつもそんなんなん?」

 みちょの瞳が再び私の顔を覗きこんできた。大きな瞳の上にはカールのきつめなつけまつ毛が乗っている。そのせいだからなのか、ゲームのキャラのアバターによく似ている。

 割とゲーマーのアバターは自分の理想の顔を創りがちだが、彼女はリアルな自分に寄せているらしい。よく見たら、唇の下にある黒子の位置も同じだった。

「ごめーんねー。びっくりさせた?
 あっちにキングとクイーンおるよ。まずはみんなキングにご挨拶♪」

 腕を掴まれ、部屋の奥へ奥へと連れて行かれた。
 ガラス張りのブースの先に、一際高い位置に座る男性がいる。その男性を囲うようにして座る女子たち。
 
 その女子たちの中心にいるファントムの衣装を見に纏う男性は、私よりもずっと年上のようだった。

 「キングー♪  烈火、拉致ってきたで!」

 私の腕を掴んでいるみちょが、声を張り上げる。そばに集まっていた女子がさっとこちらへと視線を向けた。
 女子の囲まれたキングの姿は、まさに王様のようである。
 これは一体、どんなふうに挨拶するのが正しいのだろう。
 
 困った挙句、職業スマイルを浮かべてみる。濡れたように輝くシャツに白いジャケットを着る、金色に髪を染めた短髪の男が興味津々と言った瞳をこちらへと向けた。リムレスのグレイのサングラスをつけた強面なイメージとは裏腹にサングラスをとった顔は、人懐こそうな笑顔を浮かべていた。