彼らは身体を揺らし音楽と共にこの時間を楽しんでいるように見える。ズンズンと腹の底に重低音が響く店内は床が見えないほどに人が溢れているところを見る限り、大盛況のようだ。

「ここね。プレイヤー名の横に”まる”つけてください」

 黒い羽を生やした悪魔のコスプレをした受付の女の子に名簿を差し出された。自分の名前に丸をつける。

「はいこれ。イベントの通行証なんで、つけといてくださいね」蛍光色のラバーバンドを差し出された。?バンドには「Monster planet on-line ペテルギウス 10・31 5周年」のメッセージが刻まれている。

 手首にラバーバンドを押し込んでいると、血だらけのナースが走ってきた。
「めちゃ可愛い子おるー! めっちゃ可愛い子おるー! 
 誰々? なになに?」

 一気に距離を縮められ、腕を組まれた。血だらけナースに捕まるなんて、もはや絶叫しそうである。ナースの大きな胸が肘に当たっている。とんでもなく距離感がバグっている幽霊の登場に、びびってしまう。 

「れ、烈火です」?と、声をうわずらせながら応える。

「まじで? 烈火? 
 あの猪突猛進な戦士の烈火がおとなしめの美人ちゃんとかウケるんだけどー! 
 あ、ウチ、”みちょ”でーす」??

 みちょは、自撮りするみたいにポーズをする。