02ペテルギウスのオフ会
六本木の地下道から這い出して、地上階にあるフラワーショップの前で立ち止まった。
透明ガラスに映る私は黒のガウンコートを羽織っているが、頭には白菊と椿の髪飾りがついていて、裾からチラチラと衣装が見え隠れしている。
見る人が見れば気づかれそうな特徴的な髪飾りを隠すように、手で押さえつけた。
「おっと、いけないいけない。外し忘れてた」
頭から飾りを抜き取って、一旦カバンの中へと仕舞う。
ハロウィンということもあり電車の中も、ちょっと変わった服装の人を見かけた。
でもそれは二十歳そこそこの学生たちが友達同士で和気藹々としていれば、なんだか微笑ましい景色に見えるものだが、社会人にもなって一人でコスプレしているのは、恥ずかしい。
なので、オフ会会場にたどり着くまでは、コートの紐はきっちりと縛っておこうと固く誓った。こんな格好を、リアルの知り合いに見られた暁には恥ずかしさで死体になる!……からである。
ああ、さっさとチュンカだけもらって、帰りたい……。
先日キングはオフ会のドレスコードを指定した。
キング:「六本木の店貸し切ったんで。
当日、ハロウィンだから、コスで来るってことで、よろしく!」?
当然のことのように難問をペテルギウスの住民たちに投げかけたキングは、リアルはパリピに違いない。コス衣装を持ってるゲーマーがどれほどいるのか、会場が六本木なんて、コミュ障のゲームオタクたちが心のハードルをどれだけ飛び越えねばならないのか。全く理解できていないなんて、ペテルギウスの王様失格である。
