隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました


 「あの。峯岸さん、私……」と言いかけたところで背後から何者かにぐっと腕を引かれた。振り返ると五百城が無表情のまま立っている。いつの間に部屋の中に上がり込んでいたのだろうか。峯岸も突然降って湧いた来訪者に驚いている。
 「帰りましょう」と力強く五百城が言うなり無理やり私を引っ張る。その勢いのまま一緒に峯岸の部屋を後にする。峯岸のマンションから一歩離れた通りに出たところで、五百城は突然、足を止めた。
 
「ムギ……くん?」

恐々と五百城の顔色を伺うと、彼の顔には呆れとも怒りとも言えぬ表情が張り付いていた。

「何やってんですか。別れ話をしに行ったと思ったらまた丸込まれそうになってましたよね。ああやって弱いところを見せて同情心煽ってるって気付いてください。そんなんだから、つけ込まれるんですよ」

「え、いつから見てたの?」

 質問に応える代わりに疲労感たっぷり込めたため息を吐き出した。彼の言う通りである。相手は勇者。心理的戦略もお手のものである。まんまと勇者峯岸が可哀想に感じて許してもいいかなんて思ってしまった。あそこまで計画的に準備していたとしても、あの旅館の部屋での出来事はお酒による過ちなんだろうから、って峯岸を許しかけていた。

「これからも付き合うんですか」

 五百城の言葉は私を心配しているようだった。峯岸との出来事は詳しくは話していない。でもあんな雪の中飛び出すほどのことをした相手だから、ある程度の想像はついているんだろう。
 
 峯岸とはここまでにしたほうがいい、それはそうなんだけど。