隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 あのイブの夜、病室で五百城とキスをした。
 といってもほんの一瞬、唇が触れ合う程度のものだ。愛してると伝えるには短くて、友人同士のlikeでは説明できない。
 
「大学生……なんだよなあ」と、五百城とのこれからを想像して頭を振る。恋愛する相手として年齢差も生活の基盤も違いすぎるし、将来性もある青年の世界に私が組み込まれる未来が見えない。学生との恋愛ってわりと近そうなのに、案外遠い。

 とはいえ、告白されたわけでもないし、考えても仕方ないな。
 仕事しよう。課金をするには仕事!

 仕事納めということもあって定時に終わり、皆早々にオフィスを出る。
 エレベーターを降りると共有ロビーの席に座る峯岸の背中に気づいた。

 足を止めた私へと、「あの人、燕が休んでいる時もずっと来てたよ」と吉野遥が耳打ちする。休んでいる間も会社に来るなんて、勇者のくせに何してんの! と、あの侘しい背中に喝を入れてあげたい。

 けれども、人を騙し討ちするタイプの勇者が、この先どんなトリッキーな妙技を繰り出すかわかったものではない。関わらないのが一番である。

「燕さん」と、峯岸の呼び止める声がロビーに響き渡り、私以外の誰もが峯岸へと注目した。彼は人の視線を受けることに慣れているのか、舞台の花道を闊歩して、私へ一直線に近づいた。
 彼の思惑通りか、同僚たちの手前、逃げるという手段が封印されてしまった。仕方ない……、峯岸へと足先を向ける。