隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 突然、アオーンと狼の遠吠えが聞こえて、思わず悲鳴をあげてしまった。

 五百城の「どこか教えてください! 烈火さん! 烈火さん!……」私を呼ぶ声がスマホから聞こえる。
 あたりは真っ暗で、浴衣が雪で濡れてだんだん重たくなっていくし、全身の震えは止まらないし、もう頭の中がぐっちゃぐちゃだ。

「わかんない……わかんないよ。
 ムギくん、どうしよう。私、どこにいるんだろ、わかんない」

 ダサい。ダサすぎる。
 年下の五百城に向かい、子供みたいなことを言う自分が、ダサくて情けなくて恥ずかしい。涙が溢れ、眼だけが熱くて火照っている。
 「落ち着いてください。何が見えるか、ひとつずつ教えてください。看板でもなんでもいいんで、目にしたもの口に出してください」

 五百城は、言葉を覚えたての子供に話しかけるように一言一言をゆっくりと発した。
 
「灯りの数はいくつぐらいありますか」
「屋根は何色ですか」

 五百城に指示されるままに、一つ一つ答えていく。
 話しているうちに、徐々に気持ちも落ち着いてきた。
 焦っていた感情が、薄らぎ、吹雪で何も見えなかった気がしていた場所に、ポツポツと灯りがみえはじめた。
 明るが見える。遠いけど、家に屋根っぽいのも見える。逆方向は逆に真っ暗だった。薄墨で描いたような森のシルエットが見える。