隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 男性経験がないわけじゃない。峯岸のような容姿もスペックも高い男性に耳触りもいい言葉を囁かれれば、少しは気持ちも傾くというもの。


 けれど、何かが違う。
 心が動いていない。
 美味しそうなものを見つけた時や、ゲームで新しいアイテムを手にできた時のワクワクもトキメキも、彼から感じられない。 
 
 こんなに温かい人なのに、優しい言葉をくれる人なのに、
 私の心の中は、冷え切っている。

「峯岸さん。ごめんなさい」

 そんな言葉が返ってくるとは露ほども思わなかったのか、素っ頓狂な声を発した。そんな彼の顔を見ることもなく部屋から飛び出した。


 気づくと、冷たいアスファルトの上を駆けていた。
 靴を履いた記憶はなかった。
 とにかくここから離れたい……
 ただその気持ちだけで、ブレーキの壊れてしまった車輪のように足が前へ前へと進んでいた。

 しばらくして足に痛みを感じて立ち止まる。雪が頬に当たる。
 ふと見上げると空には星はなく、重たい灰色に覆われていた。
 雪が降る夜なんて、東京だったら珍しいスノークリスマスだとはしゃいでいたことだろう。だがここは群馬県の山奥で、至る場所は雪だらけである。
 積雪に埋まる自分の裸足に目を落とし、ようやく自分がどこへ向かっているのかと周りを見回した。

「ここ…、どこ……?」

 発した声が頬を容赦なく叩く雪で掻き消される。
 どこまでも続く純白の平原の中、私は1人立っていた。

周囲の状況を把握した途端、寒さが全身を襲った。