隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました

 きっと母は嬉々として峯岸との関係が次の段階に入ったと父に告げることだろう。

 峯岸は超えてはいけない、一線を超えてしまった。
 娘とイブに温泉旅行。
 父は最後の一手とばかりに峯岸を囲い込むはず。結婚、婚約、その辺りのフレーズが早ければ今年中に聞こえてきそうだ。

大浴場にある旅館自慢の露天風呂を満喫し、さっぱりして部屋に戻ると、峯岸が畳の間でお茶を飲んでいた。本当に仕事だったのか、スーツのジャケットと仕事カバンが無造作に畳の上に転がっている。

「トラブル、片付いたんですか?」
 白々しいと思いつつ、声をかけると、峯岸は表情を強張らせてハッと息を呑んだ。
「あ、燕さん……」と呟いたのちに、ざっと頭を下げた。

「申し訳ない!
 こんな騙し討ちみたいな真似をしてしまい、自分でも恥ずかしく思います。その……どうしても燕さんに来て頂かなくてはならなくなってしまって」

 峯岸の様子から見ても、相当困っているのがわかる。
 私が必要な緊急事態とは、なんなのだ。

「実は……」と、峯岸は語り出した。

 先月あたり、父から私との交際が順調かどうかを尋ねられたらしい。
 関係が順調であることを伝えると、
「峯岸くん。旅館部屋を用意したから、よかったら娘を誘ってやってくれ。なかなか予約が取れない客室を無理言ってお願いしたんだ。無駄にしないでくれよ」と、なかなかの圧をかけられたらしい。

 当然、峯岸と私はそういう関係ではないので、旅館へ誘うことはなかった。