気分を切り替えてゲーム画面に視線を戻す。
 ムギのアバターが方向転換して、烈火の方へと向いている。アバターのモーションスタンバイの承認ボタンを押すと、ハグモーションが始まった。
 桜の花びらが舞い散りキラキラとした光が降り注ぐ中、ピアノの旋律が奏でられる。
 ほんの数秒のモーションだが、同居システムの中でも一番好きなものだ。優美な音楽が流れる中、猫耳美少女と女戦士が抱き合うシーンを見つめた。

 烈火:「ムギちゃーん! 今日はまた一段とかわいいよおおおー!」

 ムギ:「今日はアプデ入ってませんので、烈火さんの目がおかしいだけだと思います」 

 烈火:「やっぱ、昨日よりもムギちゃんを好きって想いが増えてるせいかな? 
 好きレベルが上昇したからキラキラしてるんだよね?」

 ムギ:「モニターを掃除するといいと思いますよ」

 ムギはいつも通りの塩対応で、さっさと作業部屋へと消えていった。

 ――そう、
 こんな同居人が私の大切な人。
 ここが私の場所。
 リアルのステータス画面には表示されない、白枝燕のリアルである。


 討伐イベントが終了した後、ペテルギウスメンバーのチャットが立った。
 キング:「ペテルギウス誕生5周年になるんで、ここらでオフ会ってのもありかなって思ってるんだけど。どう?」

 突然のオフ会宣言に、VCをつけていたクイーンが「オフ会。楽しそうですね」と合いの手を入れた。おなじくクイーンとボイチャ中だったみちょも、