"推したい"婚約者

これはアンジュ・ブルナーが、中央区へ異動が決まった時の出来事。

『アンジュ、やっぱり屋敷を買おう?』

『こればかりは譲れません。私はこの機会に…一人暮らしを始めます!』

アンジュの住処についての小話である。




まだ冬の寒さも穏やかな月。
有給をとったアンジュは、長兄ライオネルと次兄セオドアとともに中央のある不動産屋に来ていた。
もちろん借家探しのために。
元々1人で来る予定であったが、心配性な兄たちがついて来てしまったのだ。

『仲のいいご兄弟ですね』

『いやぁ…』

顔色の悪い店主の言葉に、アンジュは曖昧に笑う他ない。

『もう、静かにしててよね』

『さぁ?それは状況しだい』

『ライオネル兄さんに同じ』

アンジュは兄を肘で小突いたが、彼らは涼しい顔で受け流した。

アンジュはどうにかして今日、住処を決めねばならなかった。
でなければ、ライオネルが中央区に屋敷を買ってしまうからだ。



前日のこと。
昼間は陽光が差し冬の寒さが和む、少し暖かな日であった。陽が沈んでからは一気に冷え込みが増した。西区のブルナー領では木々にうっすらと氷の膜が張るほどである。
寒さにも負けない春の陽気さが漂うブルナー家であるが、この夜は緊張感に包まれていた。アンジュの中央での住まいについて、ライオネルと話し合いをしていたのだが、2人の主張は平行線をたどり喧嘩寸前までヒートアップしていた。
中央に屋敷を買おうと提案、実行しようとするライオネル対一人暮らしをしたいアンジュ。
突然決まった妹の移動にライオネルは苛立っていた。西の最終決定権はライオネルにあるというにも関わらず、彼をすっ飛ばして決定された。

『私だって20歳の軍人。いつまでも兄さんたちに面倒かけてられないよ』

確かにアンジュは職を持つ、二十歳を迎えた立派な大人だ。西の重要戦力であり、そこらの悪人には負けない自負がある。いずれ結婚すれば家を出るのだから、今からでも構わないはずだ。祖父たちからしっかり教えられた生活能力も備わっている。一人暮らししても問題ない。
彼女の言い分は尤もだ。しかしライオネルの事情もなかなかに深い。彼だってアンジュをずっと屋敷に閉じ込めたい訳ではない。むしろ世界を楽しく飛び回って欲しい。しかし悪意で捻じ曲げられた世論では、アンジュが無闇に傷つけられる恐れがある。噂が強く根付く中央区では、何が起こるかわからない。中央区警察局にはセオドアが勤めているが、常にそばに居ない。彼女が泣きたくなった時、側で涙を拭く誰かがいない。アルフレードが頼りになればいいが、まだ仕事に追われる若い身分。正直当てにならない。
なによりひどく不安なのだ。アンジュが一人暮らしを始めれば2度と戻らない可能性に恐れている。悪評が広まり、降りかかる問題は自分のせいだと思い詰めた彼女が独り立ちを意識しているのは強く感じていたからこそ、このまま消えてしまうのではないかと不安でしょうがないのだ。

『そ、も、そ、も、だ。なんでアンジュが中央に異動なんだよ。認めた覚えないぞ私は!』

『そんなこと言われたって、私にどうにもできないよ!』

そもそも異動に納得していないライオネルはごねる、ごねる。

『危ないんだよ?中央は西に比べて治安悪いんだからさ』

『それ、ローランド公が聞いたら泣くよ?エリアによっては危なくない場所あるの知ってるんだから』

『だけどさぁ…』

アンジュをどうにか説き伏せようとライオネルはごねる。アンジュも負けじと反論するも、話は平行線を辿る。
話し合いに参加したポエテランジュがいなければ、大喧嘩になっていたかもしれない。
ひどく揉めるならば間に入るが、ポエテランジュは2人を見守るに留めている。

『なら、せめてセオドアも一緒に住む屋敷を買おう?今ならアルフレードも付けるから…』

『おまけみたいに言わないの。彼だって用事があるんだから勝手に話を進めたら迷惑だよ』

((アイツ…アンジュに何を語ってるんだよ))

ライオネルは心の中で舌打ちをする。アンジュを愛するアルフレードならば、絶対に喜ぶに違いない。しかし婚約者の想いが伝わっていないアンジュには通用しなかった。

『それに皆んなに手伝ってもらって色々と情報集めたんだから』

アンジュがテーブルに広げたのは賃貸のチラシ。精霊や妖精たちに協力してもらい、中央の物件を調べてもらったと言う。

((いつの間に…))

ライオネルは下唇を噛む。流石、精霊の愛し子。アンジュのためなら気分屋の精霊たちも力を惜しまない。彼はデスクに広げられたチラシに目を通す。確かに目が飛び出るほど安く…魅力的な借家ばかりだ。トロール学生のいびきで夜寝れなくなるアパートの部屋。俳優の霊が集まり夜な夜な劇が繰り広げられる館。妖精界に通じる入り口があると噂される屋敷。なぜか7日で人が消える地下室。
"曰く付き"でなければ、ライオネルも納得したに違いない物件ばかり。

『いや、なにこの選択肢。中央よく人が暮らしてるな』

『安くて広くて安心な部屋のチラシを選んでもらった』

『安心が精霊基準だよ。人が暮らすには危ないって』

いたずらを仕掛けても愛し子を陥れることはないため、アンジュの願いを叶えようと精霊たちは真剣に選んだのだろう。が、人間基準では不穏すぎる。

『テオ兄さんだって、それで安く部屋借りたじゃない』

アンジュが言う通り、セオドアたちが暮らすアパートの部屋は相場の半額に近い家賃で借りている。
これは部屋に複数体の霊が住み着いていたのを困った大家が、霊を怖がらない人間に住んでもらえれば問題ないと考えた苦肉の策に、中央勤務が決まり丁度部屋を探していたセオドアとマッチングした。
大家が提示したのは家賃3割引きの敷金礼金なし。1人と1匹の生活に十分すぎる部屋を借りれるなら安いとセオドアも納得して契約を結んだ。
結果は想像以上。セオドアと契約する精霊、アフの強い気に圧倒され霊は弱体化。さらにセオドアが同僚からもらった護符や霊退い道具をインテリアに飾っていたため彷徨う魂は成仏した。霊は立ち寄らなくなり、住民たちが困っていれば力を貸すセオドアらに住み続けてもらう方がメリットが大きいと考えた大家によって、今は家賃4割引きになっている。

『あれは特別例!あんな物件は2度とないよ』

曰く付き物件を安全に暮らし、大家をはじめ住人たちと仲が良いなど、ライオネルが言う通り特例中の特例だ。悪い子も良い子も、決して真似してはいけない。いけないのだが、決めたら走り切ろうとするアンジュにはなかなか難しい部分でもある。

『けど大抵の脅威も屁じゃない私みたいのが、こういう賃貸借りるのが1番じゃない?』

『どんな精神?ボランティアで安全を捨てたらだめだよアンジュ』

『コト兄さんみたいにホテル暮らしなら許可するの?』

ライオネルは全力で否定する。
兄妹4番目のコトレットは、西南区にある国立研究局の研究員である。幼い頃から研究と発明以外は疎かになりがちで、勤め始めても日夜研究室で過ごし、上司に叱られてようやく外に出る。月に数度ようやく施設の外にでる彼には当然借家などなく、その日の気分と財布状況で、宿泊施設を点々としている。貿易の主要である西南区に宿泊施設が多いことと、必要以上は持たない主義ーというよりも大切なものは実家に置いているーだからこそできる技、さらに最近は海外研修で国にいないことも拍車がかかり、コトレットには部屋を借りる気は全く無い。ライオネルの1つ下の妹、つまりアンジュの姉であるセレストが実家を出た時は婚約者ー今は無事結婚して夫となった。結婚前に色々としてがした2人は一度しっかり暮らそうと話がまとまりーと一緒に、屋敷の近くに住んでいた。ライオネルの不安を察して、婚約者がセレストと共によく遊びに来てくれたために心配はなかった。
ライオネル自身も、ブルナー家屋敷以外で日常生活を送った経験がない。

((だめだ。今回ばかりは説得材料が無さすぎる))

ライオネルは頭を抱える。突然決まった異動に不安要素しか感じない。せめてアンジュに安心安全な場所で暮らしてほしい。考えを巡らすも、思いつくアイデアは1つしかない。

『やっぱり確実に安心安全な上、家賃を払う必要なんてないブルナー家のセカンドハウスを買った方が良いよ』

『だから、それは嫌だって!もう、とにかく明日、中央に行ってきます!』

『アンジュ!』

異動日まで時間があまりない。話が一向に進まない事に痺れを切らしたアンジュー正直半分は彼女の部屋選びに問題があるーは、話を切り上げ自室に戻ろうとした。

『ぴゅい』

すると、ポエテランジュが優しく鳴いた。
慈愛に満ちた瞳はアンジュとライオネル、どちらも交互に見ると促すように再び鳴く。

きちんとおやすみの挨拶をなさい

偉大なる母の言葉に、チラシをまとめ勢いよく部屋を出ようとしたアンジュは足を止めた。一度深く息を吐くと、ライオネルに振り返る。

『…おやすみなさい』

『…うん。おやすみ』

『ポエテランジュも。おやすみ』

ポエテランジュが手を振ったのを確認してから、アンジュは改めて静かに部屋から出て行った。
ライオネルは身を投げ出すように椅子に座り天井を仰ぐ。ポエテランジュは契約者に近寄ると、そっと手に触れる。

『…ありがとうポエテランジュ。分かってる、分かってるんだよ』

空を睨みながら、ライオネルは自身に言い聞かせるように呟く。
アンジュも子供ではない。いい加減構い倒すのは良くないと思いつつも、拭えぬ不安を消したくてつい余計に関わろうとしてしまう。気がつけば1人離れた場所で、世界の果てに思いを寄せるように家族を遠くから見つめる瞳を思い出す度に、アンジュが消えていなくなりそうで恐ろしい。

『もう、あの子も20歳だものね。1人で暮らしてみたいと思うのも当然よ』

本当は誰よりも心配しているはずの母親も、アンジュの意思を尊重してあまり口を挟まないようにしている。

((アンジュが外に興味を持ってるなら、そっとしておくべきか?))

たちまちチラシが脳裏に浮かぶ。このまま放っておけば、もっと変な物件を選んでしまいそうな未来を想像したライオネルは結局予定を全てずらし、嫌がるアンジュに構わずついて来た。
ポエテランジュから話が伝わっていたセオドアも駅で待ち構えており、アンジュは兄2人と不動産屋に足を運んだのだ。



3人迎えてくれた不動産屋の店主は疲れているようだったが、丁寧に対応してくれる。話の主導権を兄に握られまいと、アンジュは早速一枚のチラシを見せた。彼女の一番候補の物件である。チラシは放置されたままだったのか文字は滲み、少しカビ臭い。

『あの、この物件の詳細を伺いたくて』

チラシを見るや否や、人が良さそうな店主の顔はたちまち厳しくなる。彼は差し出されたチラシを突き返す。

『…お嬢さん。冗談はいけない。それとも冷やかしならお帰りいただきたい』

『冷やかしではなく本気です』

『この物件は危ない。女性1人で暮らすような場所じゃないのです。2年前に心中事件が起こりまして。よくある男女のもつれで、悲惨な現場でした。片付けも終えているのですが、残留思念が強く残ってしまって…。薄暗い路地にあるため、ますます陰の気が強くなり、霊が溜まってしまって…」

専門家に頼みたくとも都合が合わずそのまま放置している状態で、貸し出しのチラシは撤去したと店主は説明してくれた。壁の概念などない精霊たちは、撤去し忘れた1枚をどこからか手に入れてしまったようだ。
まさかの展開に、アンジュは慌てて言葉を重ねる。

『その問題、私なら解決できます』

『ご職業は軍にお勤めとの事ですが、貴女はただの人でしょう?』

『人ではありますが…。その”西の化け物娘”について聞いたことは?』

『いえ…?』

怪訝そうに首を捻る彼に、アンジュは思わず兄たちに顔を向ける。

『ところで今西とおっしゃいましたか?もしや皆様、西領土のブルナー家の方々ですか?』

アンジュたちが頷けば、店主はさらに態度をお固くさせた。チラシに目線を落とし、言葉をにごらす。

『なおさら、おすすめはできません。だって、この物件は…』

『…ぁ』

目線の先の何かに気づいたアンジュが、小さく声を上げる。店主の目線の先に書かれている箇所に、何が言いたいのかライオネルも察することができた。

『お嬢さん。女性の一人暮らしはただでさえ配慮しない事が多いのです。特別な力があろうと、自分を大切にすることは第一なのですよ。他にも一人暮らし向けの物件はありますし、よければ知り合いをご紹介しますから』

優しく笑う店主に、アンジュは言葉を詰まらせてしまった。

((『よければ知り合いをご紹介しますから』か。お人好しのようだな))


軍人であれば多少の無茶も効くだろうと、多少の危険があっても物件を勧めてくる場合があるのは普通であるのだが、店主にとってアンジュも一般客として接してくれる。問題のある物件を抱えていても徳などないというのに。まぁ何かあれば店主に責任が及ぶため、当たり前だと言えば当たり前なのだが。

『店主、よければ一度見せていただきますか?』

『兄さん』

久しくこのような人物と接していなかったライオネルは、一個人として少し手を貸したくなった。

『貴方のお気遣い、大変嬉しく思います。久しぶりに心からの親切に触れました。だからこそ、そのお返しをさせていただきたく思います。ブルナー家の当主、西の召喚公として、妹の力ならば必ず圧倒すると断言します』

『……』

店主は改めてアンジュと向き合う。真っ直ぐ見つめ返す、真っ赤な瞳。揺るぎない意思を感じた彼は『…ご案内しましょう』と重い腰を上げた。





4人は中央広場の横にある区画に移動した。確かに一本の路地がやけに暗い。近づくにつれ、霊気が強くなっていく。その圧に、セオドアの契約精霊アフが姿を現した。不快そうに身体をゆらし毛を逆立て、唸り声をあげる。

『アンジュ。私たちはここで待ってるから』

託されたアンジュはしっかりと頷いた。その顔つきは、国民を守る頼もしい軍人そのものであった。ライオネル、セオドアとアフ、店主は離れた場所で様子を伺う。


アンジュが路地に入れば、途端に影が不安定に揺らめいた。ごうごうと動く様は生き物のようだ。彼女が一軒家にかけられた封鎖テープを切り、一歩、踏み入る。同時に力を解放すれば、瞬間に霊は消えた。


『………え?なに、が』

路地や建物に日差しが差し込み、明るさを取り戻した。ひしひしと伝わっていた霊気もなくなった。

『さ、いきましょう』

3人が建物に入ると、アンジュは2階へ上がって行くところであった。1階のキッチンやリビング、風呂場洗面を確認終わったようだ。彼女の後ろをライオネルたちもついていく。
2階にはトイレに、部屋が5つあった。1番奥の部屋は日差しの入る大きなガラス窓があり、それぞれの部屋には洗面もついている。最新ではないが、そのほか住宅設備も備わっているようだ。

『やっぱり広い!部屋もたくさん、設備完備の一戸建て賃貸だ』

『えぇ…一度設備の確認やメンテナンスは必要ですが、改装したばかりでしたから。それにしても、澱みすらないとは』

頭痛の種が一瞬で消え去り、店主は呆然と部屋を見渡している。当たり前だ。一気に祓うには相当な魔力と、強力な術をかける必要がある。払い損ねた場合、怨みや辛みが増して霊の力が強くなってしまう。普通なら段階を踏み、何人もの術師が力を掛け合い祓うのが通常だ。
今回店主はかなり運が良い。確実に対応できる客が3人もいたのだから。

『アンジュが暮らせば、確実に寄り付かなくなるかな』

『ここなら俺らが住むアパートからも近い。何かあれば駆けつけられる。…でもアンジュ、この広さで寂しくないか?』

『大丈夫だよ!…多分』

アンジュが改めて入居を希望を伝えれば、彼は輝くような笑顔になった。

『こちらこそお願いします!もちろん家賃もお安くさせていただきますよ。1人でも暮らせば事故物件から外れるので…何から何まで。本当助かります』

念の為家の確認をしたのち、セオドア経由で連絡が入り、その時に改めて契約を結ぶ段取りとなった。
予定よりもかなり早く、ライオネルとアンジュは西へ帰ることになった。





『ありがとう兄さん。後押ししてくれて』

セオドアとアフと別れた2人。列車に揺られながら、アンジュはライオネルに礼を伝えた。

『店主が真摯に対応したからだ。でなければ床を転げ回って全力で駄々を捏ねて阻止したよ』

『見ないで済んでよかった』

『私も尊厳をなくさずに済んでよかったよ』

兄妹は笑い合う。

『何かあれば必ず助けを求めなさい。忙しくてもセオドア…とアルフレードの元に行くんだよ?こっちにも連絡入れること』

『はい』

『それにしても…中央って思ったよりも、その、大変なんだね』

『…そうだね』

8公会議でも議題に上がる。中央区の魔術系専門職の信頼がなくなっているのだ。原因は14年前のテロ事件。加担していた中央魔術師のせいだ。
問題が起これば他区の魔術師を雇うしかないが、賃金が高くなってしまい難しくなっている。結果、金銭的に余裕がない者は後回しになりがちだ。割を食うのはいつも一般市民。月末に開かれる会議で、改めて解決策を打ち出さねばとライオネルは考える。

((父さん…))

店主とアンジュの面持ちが変わったのは、借家が中央広場の近くだったからだ。つまりはデュドネが亡くなった場所。2人が気を遣ってくれたのは嬉しいが、正直に言えばあまり感情はない。とうの昔に気持ちの整理はついている。

((なにかあったら、助けてくださいね父さん))

なにより家族を愛していた父親は、あの世…いや天国の門に留まり、家族を見守っているに違いない。ならば神よりも、頼りになった父に願った方が良い。

『休みの時には必ず帰って来てね。約束だよ、アンジュ』

ライオネルの願いに、アンジュは少し間を置いたが…ゆっくりと頷いた。



『そういえば、やたら部屋が多い物件選んでたけどどうして?』

『……みんな泊まりにくるでしょ?客室はあった方がいいだろうかなって』

セオドアの部屋選びの基準も同じで合った。住居を持たないコトレットも、西南区では大抵ワンルームのみで家族を呼べない、意味がないと話していた。
なんやかんや家族を思う弟たちに、ライオネルは胸がいっぱいになる。

『もー!可愛いなあ私の弟たちは!』

まずは目の前にいるアンジュを存分に構うことにしたライオネル。20歳を迎えたアンジュにとっては子供扱いする兄の態度は恥ずかしくてたまらないが、離れて暮らすことに寂しさを感じているのがもしれないと、今回は素直に頭を撫でられるのであった。

数日後。配管や設備などのメンテナンスが特急で行われ、訳あり物件を破格の値段で借りれることになったアンジュは無事に引っ越しの手はずを整えたのであった。





後日談であるが、引っ越し先をアルフレードに手紙で報告すれば、彼はひどく心配し、わざわざ確認しに店主の元に訪れ詳細を確認した喉という。帰りにアルフレードに捕まり、内見に再び付き合う羽目にあったセオドアからその事を連絡され、アンジュは首をかしげた。

『…安心安全な訳あり物件、店主さんも優しい物件だって連絡したんだけど。そんなに心配になる要素あったかなぁ?』

アンジュのつぶやきに、ライオネルたちは『それは、そうだよ』と言葉を揃えたのであった。


何度でも繰り返すが、ライオネルやアンジュたちは特別な訓練を受けている。彼らは問題がなく済ませたが、一般人である我々は曰く付き物件には絶対に近づかないよう、お互い気をつけて新しい1年を過ごそうではないか。