君の明かりを見ていた

「ねぇね、本当に県外に行っちゃうの?」
「うん。取りたい資格、県外じゃないと取れないからね。」
「そっか。……寂しいー!!」

私の部屋に突撃してきた桜は、部屋に入るなり、大きな声で話しながら、抱きついてきた。
桜は自分の気持ちを隠したり、押し殺したりはしない。思ったこと、感じたこと、全て正直に言葉にする子だ。
でも、人を傷付ける言葉は絶対に言わない。線引きが上手で、表情豊か。だからこそ、みんなから好かれているのだ。

私は幼い頃からあまり感情を表に出す方ではなかった。
「落ち着いてるね」「大人びてるね」と言われることもあった。でもそれ以上に、「もっとはしゃいだらいいのに」「こどもらしくない」と言われることの方が多かった。
その分、桜の周りは「可愛い」「明るい」と肯定的な言葉で満ちていた。周りを笑顔にする力もあった。私はそんな妹の姿が誇らしかった。「私の妹すごいでしょ」って、胸を張りたくなるくらいに。

けれど同時に、羨ましいとも思った。
私にはないものを、桜はたくさん持っている。「私も桜みたいになれたらな」と考えることもあった。しかし、考えれば考えるほど、「私は桜みたいにはなれない」と痛感した。

「ねぇね。」
「ん、どうしたの。また海のことで相談?」
「ううん、今ねぇねがぼーっとしてたから。」
「あぁ、ごめんね。大学のこと考えてた。」

ほら、また嘘をついた。海のことが好きだと言葉に出来ず、今考えていたことすら素直に言えない私は、桜みたいにはなれない。