君の明かりを見ていた

「海くん、かっこいい……。」
「野口くんって恋人いるのかな?」

学校にいると、いつでもどこからでも聞こえてくる名前。高校3年間ずっと学年トップの成績を誇り、運動神経も抜群。顔も良く、学年問わず誰にでも優しい。それが、私の学校の元生徒会長、野口海(のぐち かい)

「海はそれだけじゃないのにな……。」

海は誰にでも優しい。でも、恋人にはもっと甘い。とことん恋人に尽くすタイプ。
かっこいいのは、普段の海の頑張りのおかげ。メイクもヘアセットも服のセンスだって、恋人のために頑張って磨いたもの。
成績トップをキープするため、毎日夜遅くまで部屋の明かりは付いているし、体力作りのためのランニングは、1日たりとも休まない。
私は知っている、同じ高校に通う誰もが知らないことを。
なぜなら、海は私の''妹の''恋人だから。
私が知っているのもただのお零れにすぎない。


私、山崎紫苑(やまさき しおん)は海の幼馴染だ。家が隣で、誕生日も近く、物心がつく前から一緒にいた。私の幼い頃の写真のほとんどに、海が写ってる。
幼稚園から今までずっと一緒で、海のことを1番知っているのは私だと胸を張って言えた。

気付いた時には、私は海に恋をしていた。
海は私の幼馴染で恋人で、運命の人なんだと、幼い頃から思っていた。

成長するにつれて、関わるグループが変わっていった。それでも、恋愛の漫画や小説の、クラスの中心にいるみんなから好かれる人気者が、教室の隅で本を読んでいる地味な子を好きになるように。学校での関わりがなくても、カーストが違っても、海は私を選んでくれると、心の中で確信していた。

でも違った。
海が選んだのは、私の妹だった。

私が生まれてからおよそ1年後。妹、山崎桜(やまさき さくら)は生まれた。
私のことを「ねぇね」と呼ぶ妹が可愛くて、大好きだった。
愛嬌があって、誰とでも仲良くなれる。センスが良くて、何をしてもサラッとこなしてしまう。
だから、海が桜を好きになるのも当然のことだった。私よりも可愛くて、海と同じように、クラスの中心に立ち、周りを引っ張っていく存在の桜。2人は雑誌やテレビに載るくらいお似合いで、私に勝ち目はなかった。