「じゃあ、朝ごはん、完成!」
湊が卵焼きの皿をテーブルに置いた瞬間、寝室のドアが開いた。
「……あー、腹減った」
玲央が、髪をぐしゃぐしゃのまま、眠そうな顔でリビングに現れる。
「おはよう、玲央くん」
莉瀬が声をかけると、玲央はふと湊の姿に気づいた。
「あ、湊泊まってたのか。……おお、いつもより豪華じゃん」
「湊くんが作ってくれたよ」
「って、いつもより豪華って…まあそれはそうなんだけど、ちょっとひどくない?」
「だって事実じゃん」
「うるさいなー!いつもたいへんなんだからね!?」
玲央は、卵焼きをつまみながら、ふたりのやりとりをじっと見ていた。
「てか、二人で作ってたんだな。仲良しじゃん」
冷やかすような口調に、湊と莉瀬は同時に固まった。
「な、仲良しって……!」
莉瀬が慌てて否定しようとすると、湊も「いや、そんな…」と口ごもる。
玲央は、にやりと笑って卵焼きをもうひとつ口に運んだ。
「ふーん。ま、いいけど。うまいし」
その一言に、湊はふっと笑って、莉瀬はちょっとだけ顔を伏せた。
——“仲良し”って言われると、なんか変に意識しちゃう。
でも、朝の光の中で食べる卵焼きは、いつもよりちょっとだけ、あったかかった。



