「よし…これで完璧…!」

莉瀬は、自分の部屋でベッドを見つめながら、小さくガッツポーズをした。

シーツはぴしっと張って、枕はふわふわに整えて、 布団は角まできれいに揃えて、仕上げにファブリーズをシュッシュッと振りまいた。

——香り、強すぎないかな?

——いや、ちょうどいいはず。

うん、たぶん。

「寝る準備、整ったー!」

リビングに向かって声をかける。

湊が、そっと部屋に入ってきた。

「ありがとう。…すごくきれいにしてくれたんだね」

「う、うん…まあ、いつも通り…」

顔がちょっと赤くなるのを隠しながら、莉瀬は琉久の隣にそっと横になった。

湊は、ベッドに腰を下ろして、布団をめくって入る。

その動作が、なんだか静かで、丁寧で——

——隣に湊くんがいる。

——それだけで、なんか…寝れない。

莉瀬は、目を閉じてみるけど、心臓の音が気になって眠れなかった。

隣では、湊が静かに寝息を立てている…と思ったけど、よく聞くと、まだ起きてる気配。

莉瀬は、琉久の髪をそっとなでながら、頭の中でぐるぐる考えていた。

でも、やっぱり意識しちゃう…

そのとき。

「莉瀬ちゃん、起きてる?」

湊の声が、静かに響いた。

「……うん」

莉瀬は、目を開けずに答えた。

「なんか…寝れないね」

「……うん、わたしも」

ふたりは、布団の中で、静かに言葉を交わした。

「今日、泊まれてよかった。…ありがとう」

「……ううん。こっちこそ、来てくれて嬉しかった」

その言葉に、湊はふっと笑った。

「琉久、すごく安心して寝てるね」

「うん。なでなですると、すぐ寝ちゃうんだ」

莉瀬は、琉久の髪をそっと撫でながら、隣の湊の気配を感じていた。

——この夜が、ずっと続けばいいのに。

そんな気持ちが、ふわりと胸に浮かんだ。