蕾はしばらく黙っていた。目の前の有澤先生は真摯な表情で彼女を見つめている。






「本当に……大丈夫ですか?」






その問いには様々な意味が含まれていた。板垣先生との関係性だけでなく、新病棟での役割に対する不安も。






有澤先生はゆっくりと頷いた。





「もちろん不安はあるよ。でも挑戦したいんだ。自分の力を試したい」









その言葉には揺るぎない決意があった。









蕾は胸の内で葛藤する。







板垣先生への不信感と、目の前の大好きな医師の野心的な一面。






どちらを優先すべきなのか。









「桜井さん」

考え込んでいたさくらの思考を遮るように、有澤先生が静かに呼びかける。








「君が心配してくれて、本当に嬉しいよ」