「桜井さん?大丈夫?」
「あ……、はい。」
思わず不安になる。忘れもしない。
千尋さんが病気苦しんでいた時、南先生から担当引き継いだ先生であり、治療方針を大幅に変えて治療に当たっていた板垣先生。
そして、千尋さんは自殺を図り亡くなった。
蕾はまだ、それを引き摺っていて、板垣先生を良く思っていなかった。
「どうしてあの人が……私にも、他の看護師達にも散々文句を言ったりするし、パワハラ気質でかなり評判悪い先生ですよ?」
有澤先生は困ったように眉を寄せた。
「落ち着いて。板垣先生なりの考えがあってのことだと思う。僕の経験と知識が活かせるって」
「でも先生……板垣先生と同じ病棟の担当が一緒になるんですよね?
あの人は看護師に対して威圧的すぎます。
スタッフも精神的にしんどくなるでしょうし、退職者もでたりして、入れ替えが激しくなって大変になると思いますよ。」
蕾の言葉に有澤先生は一瞬驚いたようだったが、すぐに柔和な笑みを浮かべた。
「ありがとう。他の職員のことも気にはなるけど、
僕のことも心配してくれてるんだ」
「それは…、心配くらいしますけど。」
蕾は唇を噛みしめた。
「私だって…ずっと先生を見てきたんですから。有澤先生は本当に素晴らしい先生だから……」
蕾は有澤先生の手をゆっくり優しく握りかえした。
「嬉しいよ。そう言ってもらえるだけで」
「でも……なんで板垣先生が有澤先生を?」



