「桜井さん。」 呼び止められて振り返ると、有澤先生が立っていた。 白衣のポケットに手を入れたまま、どこか疲れた表情をしている。 「有澤先生……?」 蕾の心臓が早鐘を打つ。 ちょうど会いたかった人に会えた嬉しさと同時に、異動の噂を聞いていた分だけ複雑な気持ちが入り混じる。 「お疲れさま。ちょっといい?」