昼食時。
食堂で同僚の梓と席を共にした蕾は、ふとした拍子に質問される。
「ねえ蕾ちゃん、最近雰囲気変わったよね。何かあった?」
単刀直入な問いにドキリとする。
あの駅での出来事以来、確かに蕾の中で何かが変わっていた。
でもそれは口に出すことではない。
少なくとも病院では。
「ううん、特に何も。ただ仕事に集中してるだけだよ。」
そう答えながら卵焼きを口に運ぶ。
梓は探るように見つめてきたが、「まあいいけどね」と笑顔を見せて追求はしてこなかった。
彼女なりに蕾の変化を感じ取っているのだろう。
午後のケアが始まると、蕾は病棟で忙しく動き回る。
検査待ちの患者さんに声をかけたり、医師からの指示をメモしたり。
点滴に回ったりと、忙しさの中で彼女はあることに気づいた。
(先生……最近あまり病棟に来てないな)
以前は頻繁に病棟を訪れていた有澤先生の姿が見られない。
内科の方で何か大きな案件があるのだろうか。
考えているうちに胸が痛む。
忙しいのはわかる。
でももう少し会える機会があれば良いのに。
蕾はそう願ってしまう自分がいた。
仕事が終わり更衣室で着替えている時、「ねえ聞いた?」と声が上がった。
他の先輩看護師たちが集まって何やら噂話をしていた。



