「桜井さん……」
名前を呼ばれるだけで鼓動が速くなる。
アルコールのせいなのか、それとも別の理由なのか。
わからないまま時間だけが過ぎていく。
「やっぱり……だめです」
蕾はゆっくりと手を添えて、彼の胸板を押し返した。
自分の心臓の音が耳障りなくらい大きく響いている。目を合わせられないまま言葉を紡ぐ。
「こんなの……困ります…」
有澤先生は一瞬だけ腕を緩めたが、完全には離さなかった。
「どうして?」
「だって……私たちこの間噂になったばっかりですよ。また先生と離れるかもしれない。そんなの…私は辛いです。」
「それは……」
「先生……」
蕾は揺れる瞳で有澤先生を見上げた。
酒の勢いで普段なら絶対に口にできない言葉が頭の中で零れ落ちる。
「(……好き。先生…、好きなの。)」
心の中で言葉にした途端、涙が溢れた。
二年越しの想いが堰を切ったように溢れ出す。



