さくらびと。【長編ver.完結】

「嘘。」

「え?」



「妬くわけないじゃん……私の旦那様なんだから。」



冗談めかした言葉とは裏腹に、その眼差しは切実だった。

裕紀の中で堰を切った感情があふれる。




「僕は……君がいないとダメなんだ。」




声が震えた。

握った手に力を込める。



「医学も研究も全部……君への想いがあって初めて意味があるんだよ。」




美桜の瞼がゆっくりと下がっていく。

疲れが見えても彼女は話を止めようとしなかった。






「ごめんね……こんな短い、結婚生活で……」

「謝らないでくれ。」

「でも……」




「美桜…、僕は、ずっとずっと、君に謝りたかったんだ。

もっと、美桜の事に寄り添って、些細なことでも、気にするべきだった。

僕は何も見えていなかったんだ。

もっと、早く気づいていたら…もっと何かできたはずなのに!

…君をこんなふうにさせたのは、間違いなく僕のせいだ…。


美桜…本当に、僕はどう償ったらいいか…!」



裕紀の頬からはらはらと涙が伝っていく。

言いかけた瞬間、美桜の手が彼の頬を優しく撫でた。


「裕紀…自分を攻めないで。決して、あなたのせいじゃない。

私が弱かったからだよ。
裕紀はずっと私を大切にしてくれてた。

私は、ずっと、幸せだったよ?」