病室のドアを開けると、薄暗い部屋で美桜が機械に繋がれながら眠っていた。
裕紀は枕元の小さなテーブルに花瓶を置き、窓際に立って外の景色を眺める。
桜の香りに紛れて、美桜の寝息がかすかに聞こえた。
それは儚い花びらのように今にも消えてしまいそうな音だった。
(美桜……どんなに辛くても……僕が側にいるよ)
裕紀は窓辺に座り込み、愛する妻の寝顔を見つめ続けた。
花瓶の水滴が一つ、また一つと落ちていく。
時間という名の水が刻一刻と流れていることを示すように。
次の日ー。
「何かあったの?」
午後の面会時間に訪れた裕紀の様子がおかしいことに美桜はすぐに気づいた。
いつもの明るさがなく表情が曇っている。
美桜の鋭い目が裕紀の心を見透かすようだ。
彼女はベッドの上で少し身を起こし、こちらをじっと見つめている。
「いや……別に」
咄嗟に出た返事が不自然に響くのが自分でも分かった。
慌てて笑顔を作る。
「研究室の資料が散らかってて教授に叱られただけだよ。」
嘘だとすぐに見抜いたはずなのに、美桜はそれ以上追及せず静かに微笑んだ。
「そう。頑張ってるね。」
その一言に含まれる深い理解と受容に胸が熱くなる。
彼女はいつもそうだ。
問い詰めない優しさが逆に辛かった。
「ごめん。嘘ついた。」
「気づいてたよ。」
くすりと笑う彼女の瞳が潤んでいる。
「だって……裕紀は、隠し事が下手すぎるもの。」
病院からの帰り道、夕暮れの街を歩きながら裕紀は重い足取りだった。
駅までの路地を曲がると見慣れたコンビニがあり、いつもここでアイスクリームを買うのが日課になっている。
自動ドアが開くと店内の冷気が彼を迎えた。
暫く裕紀はショーケースの前で立ち尽くしていた。
夜空は星達が、嫌という程に輝いていた。
(美桜は、あとどれくらい、生きられるだろうか……)
裕紀は枕元の小さなテーブルに花瓶を置き、窓際に立って外の景色を眺める。
桜の香りに紛れて、美桜の寝息がかすかに聞こえた。
それは儚い花びらのように今にも消えてしまいそうな音だった。
(美桜……どんなに辛くても……僕が側にいるよ)
裕紀は窓辺に座り込み、愛する妻の寝顔を見つめ続けた。
花瓶の水滴が一つ、また一つと落ちていく。
時間という名の水が刻一刻と流れていることを示すように。
次の日ー。
「何かあったの?」
午後の面会時間に訪れた裕紀の様子がおかしいことに美桜はすぐに気づいた。
いつもの明るさがなく表情が曇っている。
美桜の鋭い目が裕紀の心を見透かすようだ。
彼女はベッドの上で少し身を起こし、こちらをじっと見つめている。
「いや……別に」
咄嗟に出た返事が不自然に響くのが自分でも分かった。
慌てて笑顔を作る。
「研究室の資料が散らかってて教授に叱られただけだよ。」
嘘だとすぐに見抜いたはずなのに、美桜はそれ以上追及せず静かに微笑んだ。
「そう。頑張ってるね。」
その一言に含まれる深い理解と受容に胸が熱くなる。
彼女はいつもそうだ。
問い詰めない優しさが逆に辛かった。
「ごめん。嘘ついた。」
「気づいてたよ。」
くすりと笑う彼女の瞳が潤んでいる。
「だって……裕紀は、隠し事が下手すぎるもの。」
病院からの帰り道、夕暮れの街を歩きながら裕紀は重い足取りだった。
駅までの路地を曲がると見慣れたコンビニがあり、いつもここでアイスクリームを買うのが日課になっている。
自動ドアが開くと店内の冷気が彼を迎えた。
暫く裕紀はショーケースの前で立ち尽くしていた。
夜空は星達が、嫌という程に輝いていた。
(美桜は、あとどれくらい、生きられるだろうか……)



