さくらびと。【長編ver.完結】

「あなたが毎日欠かさず来て、時には冗談まで言い合って……


それが周りのスタッフにとっても癒しになっていたり、

大きな励みになってるのよ。」






裕紀は花瓶を持つ手に力が入った。





自分が美桜の支えになれるだけでなく、彼女が病院全体の空気まで変えているのか。






「だから……どうか無理はしないでね。」





倉橋さんは優しく付け加えた。




「辛い時は休んでね。」




その言葉の裏に隠された意味を感じ取り、裕紀は深く頭を下げた。




「ありがとうございます。」

「さてと……そろそろ夜勤の準備をしなくっちゃ。」



倉橋さんは白衣の裾を整えた。



「美桜さんにまた新しい桜を見せに行ってあげてくださいね。」



彼女が去っていく後ろ姿を見送りながら、裕紀は花瓶を美桜の病室へ運ぶために歩き出した。

廊下の窓から差し込む夕陽が桜を淡く照らす。



(僕だけじゃなく……美桜も戦ってるんだ)