「明日の朝食に和菓子を持ってくるよ。好きだったろ?」
裕紀の声が遠くに聞こえる。
美桜は天井を見つめたまま小さく頷いた。
最近は眠気と倦怠感が常につきまとうようになっていた。
「ありがとう。でも無理しないでね。」
自分のために仕事を削る裕紀の姿を見るのは辛かった。
医療現場の貴重な機会を逃しているのではないか。
将来有望な外科医の卵である夫の可能性を自分が奪っているようで申し訳なかった。
「無理なんかしてないさ。むしろここで君を見てるのが僕の希望なんだ。」
その言葉に思わず涙が溢れた。こんな時まで優しいのはなぜだろう。
「あのね……」
「うん?」
「お願いがあるんだけど。」
美桜は上体を起こそうとした。裕紀が慌てて支える。
「どうしたの?急に」
「看護師さんに迷惑かけたくないから……毎日じゃなくてもいいよ。」
一瞬沈黙が流れた。
裕紀の表情が凍りつくのを見て美桜は慌てた。
「あ、違うの。来てくれるの嬉しいんだよ?でもね……」
言葉を選ぶように慎重に続ける。
「裕紀の将来も大事にしてほしい。私のせいで医者の夢を諦めさせたくないの。」
「馬鹿なこと言うな。」
予想外に厳しい口調で遮られ美桜は驚いた。
裕紀の目に怒りのようなものが宿っている。
「君がいない未来なんて想像できない。自分の夢のために君を犠牲にするような人間になりたくないんだよ。」
握られた手に力が込められる。
「それにこれは夢を諦めてるんじゃない。人生最大の勉強してるつもりだ。『愛する人を最後まで守る方法』っていう最高の課題を与えてくれたんだよ。」
真摯な瞳に射貫かれ美桜は言葉を失った。
こんなにも深く愛されているのに疑ってしまった自分を恥じた。
「ごめんなさい……」
「謝ることないよ。不安になるのは当然だ」
時計を見た裕紀が立ち上がる。
「美桜。じゃあ行ってくる。午後は難しい手術の見学があるからね。」
「うん。行ってらっしゃい。」
ドアが閉まった後も美桜はその場所をじっと見つめていた。
幸せすぎて怖い。
こんな日々が永遠に続いて欲しいと願わずにはいられない。
「もう、このまま、時が止まればいいのになぁ…」
裕紀の声が遠くに聞こえる。
美桜は天井を見つめたまま小さく頷いた。
最近は眠気と倦怠感が常につきまとうようになっていた。
「ありがとう。でも無理しないでね。」
自分のために仕事を削る裕紀の姿を見るのは辛かった。
医療現場の貴重な機会を逃しているのではないか。
将来有望な外科医の卵である夫の可能性を自分が奪っているようで申し訳なかった。
「無理なんかしてないさ。むしろここで君を見てるのが僕の希望なんだ。」
その言葉に思わず涙が溢れた。こんな時まで優しいのはなぜだろう。
「あのね……」
「うん?」
「お願いがあるんだけど。」
美桜は上体を起こそうとした。裕紀が慌てて支える。
「どうしたの?急に」
「看護師さんに迷惑かけたくないから……毎日じゃなくてもいいよ。」
一瞬沈黙が流れた。
裕紀の表情が凍りつくのを見て美桜は慌てた。
「あ、違うの。来てくれるの嬉しいんだよ?でもね……」
言葉を選ぶように慎重に続ける。
「裕紀の将来も大事にしてほしい。私のせいで医者の夢を諦めさせたくないの。」
「馬鹿なこと言うな。」
予想外に厳しい口調で遮られ美桜は驚いた。
裕紀の目に怒りのようなものが宿っている。
「君がいない未来なんて想像できない。自分の夢のために君を犠牲にするような人間になりたくないんだよ。」
握られた手に力が込められる。
「それにこれは夢を諦めてるんじゃない。人生最大の勉強してるつもりだ。『愛する人を最後まで守る方法』っていう最高の課題を与えてくれたんだよ。」
真摯な瞳に射貫かれ美桜は言葉を失った。
こんなにも深く愛されているのに疑ってしまった自分を恥じた。
「ごめんなさい……」
「謝ることないよ。不安になるのは当然だ」
時計を見た裕紀が立ち上がる。
「美桜。じゃあ行ってくる。午後は難しい手術の見学があるからね。」
「うん。行ってらっしゃい。」
ドアが閉まった後も美桜はその場所をじっと見つめていた。
幸せすぎて怖い。
こんな日々が永遠に続いて欲しいと願わずにはいられない。
「もう、このまま、時が止まればいいのになぁ…」



