あれから1週間後、美桜は体調を崩し入院した。
「美桜さん、今日は採血の日ですよ。」
若い看護師が明るく声をかける。
美桜はベッドに横たわったまま微笑んだ。
まだ元気そうに見えるが、一週間前の湘南旅行が遠い昔のように感じられた。
「あの……朝のコーヒーありますか?」
「もちろんですよ。すぐにお持ちしますね。」
看護師が部屋を出ていくと、入れ替わりに裕紀が入ってきた。
白衣姿ではなく普段着だが、鞄には分厚い参考書が詰められている。
「美桜、おはよう。」
「おはよう裕紀。もう来てくれたの?」
時計はまだ朝の八時半を指していた。
医局での研修が始まる前に毎日顔を見せに来る裕紀の姿に美桜は胸が熱くなる。
「授業は?」
「九時からだから大丈夫。」
軽くキスをしてベッドサイドに腰掛けた裕紀は美桜の手を取った。
ほっそりとした指は以前より更に細くなっているように思えた。



