一人残された部屋の中で美桜の不安は次第に膨れ上がっていった。
普段は二人の笑い声が溢れる空間が急に広く感じる。
テレビをつけても内容が頭に入ってこない。
携帯を開けばニュースアプリの通知だけが並んでいる。
「ダメだ……横になろう。」
ふらつく足取りで寝室へ戻ると、美桜は布団の中で丸くなった。
体が鉛のように重い。喉の奥から込み上げてくる吐き気を抑えようと深呼吸を繰り返す。
「なんで急にこんな症状が……」
熱を測ってみると平熱だった。
風邪ではないようだが、ますます理由が分からない。
ネット検索しようとスマホを手に取るが、画面を見るだけで目がチカチカして諦めた。
「裕紀に連絡してみようかな……」
しかしあの忙しい夫にこれ以上負担をかけるのは躊躇われる。
昨日の大ゲンカ以来、なんとか冷静に振る舞おうと努めているのだ。
「大丈夫……何とかなるよ。」
そう自分に言い聞かせて瞼を閉じたが、眠気は一向に訪れない。
むしろ不安感が増すばかりだった。
「私…どうしちゃったのかな…」



