連絡を取り合うようになってから、美桜の印象は大きく変わった。


最初は落ち着いた文学少女だと思っていたが、メッセージアプリを開けば彼女は別人のようだった。


「明日、早朝ランニングしませんか?」



「実は密かに忍者修行中です。」



「宇宙人の存在を信じています。証拠はこちら→」



一つひとつが突拍子もなくて、最初は困惑した。




医学のレポート作成で疲れていた夜中に送られてきた謎の写真(庭の猫)を見て思わず吹き出したとき、これが恋の始まりなのかもしれないと漠然と感じた。



初めての本格的なデートは、彼女の提案で蹴鞠体験になった。

平安時代の遊びを現代でできる施設があるなんて知らなかったが、そこで美桜は見事な蹴り技を見せつけた。



しかも汗だくで「やったー成功!」と叫ぶ姿は子どものようで、そのギャップに完全にやられていた。



「私ね、昔から『お姫様みたい』って言われるのが嫌だったんだ。だから運動も勉強もがんばったの」



そう語る美桜の目は真剣で、でもどこか照れくさそうで。



「でも今は少しだけ思うの。お姫様じゃなくても、自由に生きられる世界があってよかったって。」


そんな話をしながらも、彼女は突然「次の休みは金閣寺まで走って行かない?」と言い出す。



全力で断ると「じゃあボート漕ぎは?」「それともお寺巡りハイキング?」


毎回振り回される僕だけど、気づけばそれが楽しみになっていた。


医学生の忙しい生活の中でも、彼女からのメッセージを待つ時間があることに感謝していた。