さくらびと。【長編ver.完結】

 



 千尋さんが亡くなって、数日が経った。




病院の中は、まるで時間が止まってしまったかのようだった。




私も、まるで夢の中にいるような、現実感のない日々を送っていた。




あの夜の出来事が、まだ信じられない。



千尋さんが…、


ーーー彼女がもう"この世にいない"なんて。



それでも、私は看護師としての仕事を続けなければならない。



千尋ちゃんの遺品を整理するよう、指示された。



彼女の部屋は、まるで彼女の心がそのまま現れたかのように、静かで、そして少しだけ、物悲しい空気が漂っていた。



整理を進めるうち、私は、千尋さんが治療に使っていたという1冊のノートを見つけた。



彼女が、板垣先生の悪口をたくさん書いていると笑って言っていたノートだ。



きっと、先生への不満や、苦しみが、ぎっしりと詰まっているのだろう。




そう思いながら、私はノートの最初のページを開いた。そこには、確かに、板垣先生への、厳しい言葉が綴られていた。









でも、裏のページをめくった時、私は息をのんだ。



そして、次のページ、その次のページ...そこに書かれていたのは、信じられないような言葉だったのだ。