素直にそう答えられた自分に驚く。



過去のトラウマや仕事上の葛藤、様々な重荷を抱えているはずなのに、有澤先生となら乗り越えていけそうな気がした。


けれど、蕾は有澤先生に、どうしても伝えたいことがあったのだ。





「…そっか。

じゃあ、まずは友達から始める?」



その提案に思わず蕾は、吹き出してしまった。

まさかこんなにも真面目な人からそんな冗談が出るとは思わなかったからだ。


このタイミングで、蕾を笑わせてくれる有澤先生にまたときめいていた。



「もー、なんですかそれ。」


微笑みながら答えると有澤先生も満足げに微笑んだ。



「桜井さんの事はわかった。また別の機会に話そう。」



「はい、そうですね。では、そろそろケアに回らないとなので。」




蕾は、てきぱきと用意し、仕事に移った。






*****




その日の仕事終わりの帰り道。

蕾は久しぶりに晴れやかな気持ちで帰路についた。

もちろん仕事上の悩みや不安は依然としてある。


しかし心の奥底で感じていた孤独感や自己嫌悪は、少しだけ和らいでいる気がした。


そして何より、有澤先生という新しい支えを得たことが大きな変化をもたらしていることを感じていた。



「明日からも頑張ろう……」


そう呟きながら空を見上げると、景色がいつもより明るく輝いて見えるような気がした。




蕾は新しい一歩を踏み出す準備をしていた……