さくらびと。【長編ver.完結】

 
 退勤の時間になり、私はいつものように帰宅するため病院を後にした。





今日の千尋さんは、いつもより少し元気がないように見えたが、薬が効いてきたのか、穏やかに微笑んでくれた。





きっと、疲れているのだろう。





そう思って、私は彼女の言葉を鵜呑みにしてしまった。






まさか、あんなことになるなんて、想像もしていなかった。






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その夜、私は自宅で、一人静かに夕食を摂っていた。



ふと、スマートフォンの着信音が鳴り響いた。



病院からだった。嫌な予感がした。




電話に出ると、今晩夜勤している看護師の葉山さんからだった。



彼女の声は、いつもより震えていた。



 
 「蕾さん...大変なことが...猪尾さんが...!!」