​――桜 side――
自分の恋心を自覚した私は、この気持ちに決着をつけたくて、意を決して、遥斗さんに尋ねた。

​「遥斗さん、冬の繁忙期、私、シフトを増やしたいです」

​遥斗さんは、ほんの一瞬だけ目を逸らした。

​「悪いけど、受験もあるんだろ?それに、夜はまだ遅くまで残れない。桜ちゃんはまだ未成年だから」
​「…私、子どもじゃないです!もう逃げないで!」

​思わず、感情が先に口から出た。

​「じゃあ、なんで、私だけ特別扱いなんですか?他のバイトの子には、もっと優しく接してますよね」
​「……そうだな…君には、これ以上、俺に期待させたくないんだ」

​その言葉は、私にとって残酷な答えだった。彼の優しさは、私の愛情を拒絶するための氷のような防護壁だったのだ。
店を飛び出し、夜の街灯の下を歩きながら、私は初めて、自分の恋が一方通行である事実を突きつけられ、声を上げて泣いた。