「私・・・私、先生が好きです」 

嬉しい。
俺も好きだ。

そんなこと、言えるわけがない。

代わりに、
「・・・まだそんなこと言ってるの?」
と冷たく言った。


小林はこくんと頷いた。
「ごめんなさい・・・」
と呟いた。

「でも、やっぱり私は先生が好き」

小林は視線をあげて俺を真っ直ぐな瞳で見つめた。

俺は拳をぐっと握りしめ、抱きしめたい衝動を必死に抑え、
「俺のことはもう忘れなさい」
と言った。


「忘れない。
忘れられるわけがない。
先生が好きなんだもん!」
「俺は学校辞めるし、教師じゃなくなる。
俺と小林との接点ってもうないよね?」

「それでも!」
「・・・・」

「それでも、先生が好き!」

真っ直ぐに俺を見つめる小林。

真っ直ぐに俺に感情をぶつけてくる。

それに比べて俺はどうだろう。
好きだという気持ちすら言えない。

けれど、言わないことがきっと大人だと思う。

・・・大人になんかなりたくないな。