ピンポーン。

再びチャイムが鳴る。
画面の中の小林の背後に映る景色はエントランスではなく、この部屋を出てすぐに見える風景だった。
俺は小林が部屋の前まで来ていることを悟った。

は!?
どうやってここに来たんだ!?
解錠していない1階のオートロック。
誰かに開けてもらったのだろうか?


少ししてプツリと画面が消えた。
「あっ」

俺は小林に気付かれないようにそっと玄関へ近づく。
カタンという音がした。
俺はゆっくりと忍び足で近づき、静かにドアの前に立った。

何の音もしない。
諦めて帰ったのだろうか?
スコープから外を窺う。

誰の姿も確認できない。
帰っちゃったのか・・・。

カチャ。

玄関の鍵を開け、静かに外へ出た。

「あ!!いるじゃない!!」
「え!!??」

声の方を振り返ると、壁に寄りかかった小林がいた。

「どうしてここにいるんだ?」
「さっき1階の自動ドアから出てきた人がいたから、閉まる前にひょいッと入ったの」

「そうじゃなくて・・・・・・まあ、それもなんだけど。
どうして家に来たんだ?」
「あ、そっちか」

「そっちだよ」
「逢いたくて・・・・あ、ちがッそうじゃなくて!そんな目を見開かないでよ!
えっと・・・・あ、そう!先生と話がしたくて。うん」

「話?・・・なに?」
「あの・・・・」

ガチャンと音がして隣人が出てきた。

目が合って、互いに会釈をする。
男の視線が小林に移る。
間に入るように立ち、小林を視線から隠した。

「ちょっと待ってて。ここじゃなくて外で話そう」
玄関に小林を入れ、ドアの方に体を向けさせた。

「振り返らないでね」
「えー。散らかってるんだ」

「全然。むしろぴかぴかだから」
「あはははっ。分かった。待ってるね」

俺は「絶対振り返るなよ」と指をさして、一旦中に入った。