引っ越しは明日だぞ。
荷物だってまだ残ってるんだ。
さっさと詰めなくては。
畳まれた段ボールを組み立てては荷物を詰め込んだ。
身体は動かしてはいたが、頭の中では小林のことばかりを考えてしまう。

これが小林に会う最後の機会になる。

逢いたい。

だめだ。
会ってどうするんだよ。

会わない方がいい。

何度も自分に言い聞かせた。
何度も頭を振り、小林を頭から追い出そうと努めた。

俺は無心になって荷物を詰めることに無理やり集中する。
さっきまでしていた断捨離も分別も全て忘れて、ひたすらに洋服を詰め込んでいた。



ピンポーン。

再びチャイムが鳴った。
まさか?
小林の顔が見たくて、急いでインターフォンへ行った。
画面に映っている小林を見て心臓がトクンと脈打った。

そして、
「え?玄関?」
と思わず声をあげてしまった。