それから俺たちはベンチに並んで座っておしゃべりをした。

小林が話をして、俺がうんうんと頷く。
俺が話して、小林が笑う。


どの位、そこにいたのだろうか。

シャボン玉を吹いてきた子供もいなくなり、花見をする人もほとんどいなくなっていた。

ぴゅうーっと強い風が吹いた。
ピクっと小林の肩が跳ねる。

昼間の天気が良かった分、夕方になるにつれて寒くなって来ていた。

「もう寒くなってきたな。 
病室に戻ろうか」
「そうだね」
俺は立ち上がり、小林の腕をとってゆっくりと立ち上がらせた。

「ね、先生」
「ん?」

「何かあったの?」
「え?」

俺の腕を支えに立つ小林の瞳が俺のすぐ目の前にあった。

「いつもと何か違う。 
いつもより…優しいし、話し方だって違うから…何かあったのかなって」



俺は顔を傾け、小林にゆっくりと近づけた。



ふわり。



俺は小林にキス・・・・・・する手前で止まる。



触れそうで触れない距離。



「・・・え・・・・・・」

消えそうなくらい小さな声がした。



「‥‥悪い・・・・・」



頭を戻し、俺は小林を車椅子に座らせた。

「あ、あの・・・・先せ「応援してる!!」
「え?」

「俺は小林のこと応援してるから。
バレーも、勉強も、友達も、将来の夢も、人生も、全部!」
「は?」

「応援してる」
「え?あ、うん」

「だから、頑張れ!」
「う、うん」


俺は小林の頭をポンポンと撫でて、車椅子を動かした。